クッキーと鳥さん いつも飄々としてて、おっきくて包容力があって。 そんな彼があんな顔するなんて初めて知った。 「おや、エルモにクッキーモンスター。おはよう」 「おはよう!」 「……おはよー」 にっこり笑ったビックバードの表情に、何か感じた。 思わず、むさぼっていたクッキーから顔を上げてしまうくらいには気になった。 「どうしたの?」 ちょっと心配そうに首をかしげる姿はいつも通りだけど……なんだか元気がないんじゃないか。 まじまじと見つめると、エルモとビックバードの二人は目を丸くしてる。 「クッキーどうしたの?」 「様子がおかしいですよ……クッキーを食べる手を止めるなんて」 挙げ句、ひそひそ話を始めた。 その姿はいつも通りだけど……。 「何か悲しい事でもあったのか?」 単刀直入過ぎたのか。ビックバードはきょとんと目を見開いた。 黄色い髪がふわふわ揺れるのが目の端に見えた。 エルモが何か言いかけたが、遠くにオスカーの姿を認めてうずうずし始めたので手で追い払う。「後は任せた」と口パクで言って走り去ったすぐに響く、オスカーの怒鳴り声とエルモの甘ったるい声。うるさい。 「どうしたんですか、クッキー。貴方こそ様子がおかしいですよ」 苦笑じみた笑顔と目が合う。いつも通りのようだけど、どうもぬぐいきれない違和感。 ぐっと腕を掴み、教室の外に引っ張り出した。慌てふためく声が聞こえるが気にしない。 体育館裏で、誰もいないことを確認するなり、その大きな身体を抱きしめた。 「…………」 硬直してる。それもそうか。 自分も身体は大きい方だけどがっしりしてるし、彼はひょろりと細長い。 抱きしめるというか、最初はぶら下がったようなものなのでかなり彼の腰は曲がってしまっている。気にしない。 ぎゅっと首の後ろを両手で抱きしめ、そのまま背中を撫でる。 細いがしっかりとした身体が、ぶるっと震えた。 顔を見なくてすむように、彼の顎が自分の肩に乗るように更に力を込める。 宥めるように何度も何度も背を撫でていると、わずかに彼の身体が震えていることに気づいた。 耳を掠めるのは、湿った吐息。 「……どうして?」 潤んだ声は聞かなかったことにして、背中をぽんぽんと2回。 なんだかしっくりこないので、腕を背中に回してみたり、彼の肩から腕を出してみたり、髪の毛が服に擦れてじゃらりと音を立てたり、彼の腕が戸惑うように少し離れたり、何度かがさがさしていると彼の方から収まってくれた。 お互いの体温が混ざり合い、もっと近づきたくてぎゅっと抱きしめる。 思わず唇からふーっと暖かなため息が漏れ出たと同時に、同じようなため息に耳朶をくすぐられる。 それはまるで…… 「オフロに入った時みたいだね」 芯のしっかりとした声で彼が言うから、思わず笑ってしまった。 もう、覗き込んでも大丈夫かな。 わずかに肩を押して目と目を合わせる。 いつも通りの静かな目をした彼と目があった。 「もうちょっとあったまる?」 困ったようにふふ、と笑い、ぎゅっと抱きしめられた。 トップに戻る |