お題とかやりたい! というページ。
 今までのと繋がってます。  配布元→同性愛に関する10のお題

[同じ性別は本能に逆らってる?]


 不本意ながら、アタシの身体は男性のものなのであり。

 彼もそう認識しているからこそ、失礼にも人のことをオカマオカマって言ってたのに。

 最近、その彼がおかしい。


「同じ性別ってーのは、本能に逆らってるのか?」
 人が転寝しようとソファに身体を預けているのに、何の断りもなく滑り込んできた挙句にこの台詞。
 近頃こんな風に接触してくることが多くなった。
 最初は気持ち悪がっていたケイティも、目を丸くしていたヴィンセントも、慣れたのかスルーだ。
 アタシだけだ。慣れないのは。
「何よ、突然」
 そう言って距離をとる。
 あの3人組強姦事件(ギリギリ未遂かどうかは意見が分かれるところ。でも入ってたしな…)以来、ダムーはやたらとアタシに絡む。
「そりゃそうでしょ」
 律儀に答えてしまう自分もどうかと思うが。
「何でだ?」
「繁殖できないもの」
 ヴィンセントがぎょっとしたように振り向き、ケイティがちらりとこちらを見た。
 二人でこそこそと話をし、「じゃ、もいっこの部屋で寝てくるわ」という一言と共に速やかに二人は消えた。
 ちょっと……!
「アタシも眠いんだけど」
「そうか」
 そうかじゃないわよ……。
 変なの……。
「どうしたのよ、最近、変よ」
 どうしようもないので、直球でいくことにした。
「わからんが……」
 この馬鹿にしては珍しく、口ごもる。
 もう、早く言っちゃいなさいよ。

「お前のことが気になる」

 ま、そんなとこか。






[足を絡めても、生殖出来ない。]


 びく、と身体が逃げるように跳ねる。
 熱い息が忙しなく漏れる。
 汗がじっとりと身体を濡らす。
「う……」
 殺していた声が漏れる。
「……ぁっ……!」
 一際高い嬌声と共に、吐き出される体液。


「は〜〜〜〜〜〜〜……」
 まただ。
 身体と心が見合っていない身にとっては、自分で自分を慰めることはものすごい嫌悪感を呼ぶ。
 本来なら付いていて欲しくない器官を自分で弄るわけだから。
 だから自慰は好きではないのだけど、最近毎晩のように熱に襲われる。

 ダムーには言ってなかったが、前の3人組は結構強めの薬を使っていたのだ。

 意図的に抵抗していなかった部分もあるが、できなかったという部分も多い。
 あの場でダムーが発情したのもわかる。
 鼻が敏感な彼は、薬のにおいを敏感に嗅ぎ取り、反応してしまったのだろう。
 それを、恋と履き違えるくらいに。

 あの場でダムーに襲われてしまっても良かったのかもしれない。
 どうせ肌を重ね足を絡めたところで、なんら不都合はない身体同士だ。
 場の空気に流されてしまえば、この思いは消えたのかも知れない。

 浅ましい思いを抱いたまま、熱の燻る身体を持て余す。
 解毒剤はなかなか効かないようだ。
 夜はまだ明けない。







[悩まないわけがないのに。]


「いい加減うざい」
 おいおいおいおいおい、ケイティ何だ藪から棒に。
「早く玉砕するなりうまく行くなりしてくんない?」
 それは、むこうが何かのらりくらり……。
「そんなの、あのややこしいベラがすぐうなずくわけないでしょ! アンタも男ならどーにかしなさい!」

 珍しく個人個人で部屋を取った日の夜の話だ。
 夜遅くにケイティ強襲。
 わけもわからず話をしていると、気付けば部屋を蹴り出され、白黒はっきりさせることになってしまった。


 正直、俺は芽生えたばっかりの自分の気持ちに困ってる。
 悩まないわけがない。
 今まで恋愛の対象でなかった相手に発情するようになっちまったんだぞ!?
 悩まいでか!
 単純・直情・悩まないがモットーの俺も、流石に今回ばっかりは……。
 しかも相手はあのベラフォードだ。

 悩まないわけがない……のだけど。
 悩むのは苦手だ。






[依存が深くなる関係。]


「毎晩毎晩毎晩毎晩、よく飽きないわねぇ」
 呆れたように眇められた目にすら煽られる。
 そんなこと言いながら、ちゃんと身体の準備をしてることに安心する。
 耳元で指摘してやると、真っ赤な顔をして蹴られた。
 俺はあれだ。
 ちょっと嫌がられたり恥ずかしがられたり抵抗される方が燃える!!
 そのちょっとのレベルがわからず、かなり本気の抵抗をさせてしまったこともあったが、それはそれだ。

 まさか、この自分が男相手に盛ってしまうとは意外だった。
 しばらく受け入れられなかったが、自分で自分を慰めてるベラを見た途端、どうでもよくなった。
 拝み倒して宥め賺してちょっと無理矢理な感じでさせてもらってから、ここ1週間。
 日参してるとついに上記の発言。いや、気持ちはわかるけど。
 流石に無理させすぎかとも思うが、毎日ちゃんと感じてくれるし、恥ずかしがった抵抗くらいしかないし、理性を失ったら途端に積極的になるし、とにかく、夜が楽しみで仕方がない。

 それと同時に、昼間のいつも通り極まりない様子に焦燥感が募る。
 その焦燥をどうにかしたくて、また夜に迫る。
 その繰り返し。
 何度も抱けば安心するかと思ったが、日々募るばかりで先が見えない。
 どんどん依存していく自分が可笑しく、情けない。


 そんなダムーは知らない。
 ベラが、解毒剤を飲まなくなっていることを。







[普通の恋じゃないなんて誰が決めた。(前編)]


 うっかり身体から入ってしまったこの関係。
 日々ずるずると続いているが、ケイティは何も言ってこない(ヴィンセントはもともと勘定に入っていない)
 でも多分、見てみぬフリとかそういう……!
 まあ助かってるけど……。

 いつまで続くのかわからないけど、終わらなければいいと思うくらいにダムーのことが好きだった。


「気分でも悪いのか?」
 耳元で囁かれた言葉がぞくりと肌を粟立たせ、思わず勢いよく振り返ってしまった。
「いいえ、失礼」
 危ない。
 今はお仕事の真っ最中で、アタシは付き人のフリをして依頼人と街を歩いている。
 今回の依頼人はどこぞでは有名な資産家で、何でも地元を離れた街で商売を始めるとかで、その道中の護衛を頼まれているのだ。
 今日は、この街の資産家に会いに行くところで、一番付き人としてしっくりきたアタシが付き添うことになった。
 ダムーは街をぶらついて情報収集。ケイティとヴィンスは宿で待機。
「そうか」
 さっきから、こいつ(依頼人に対する呼び方ではないけど)の視線が気になる。
 ちょっと、色めいてるというかなんと言うか。
 アタシがこんなんだから、あら同類なのねーでもごめんなさいねーという感じなのだけど、さっきからやたらとボディタッチが多い。
 何度もその不埒な手をさりげなく払い除けてはいるのだけど、過敏になる必要があるようなないような微妙なとこなのよね。
 これが意図的だったら危険……カムフラージュがうますぎて。


「お待たせ」
 どうやら商談はうまくいったようね。
 機嫌のよさそうな足取りを見るまでもなく、声が大きすぎて扉の前に待機してるアタシに筒抜けだったんだけどね。きステロタイプでも聞こえるわよ、あれ……。
「お疲れ様。さ、宿に帰りましょうか」
 付き人としてどうなのかわからないけど、先導して歩き出す。
 一応意識は後ろに置いてあるけど、これだけ安全ならそれほど気にしなくても大丈夫でしょう。
「もう?」
 いやな雲行き。
「もうちょっと街を散歩したいな」
 前に立ちふさがり、ネコのような目でにっこり笑われる。
「護衛はアタシ一人しかいないのよ? 早く帰るにこしたことないわ」
「そんなこと言わずに」
 どんどん先に立って歩き出す。
 放って行ってやろうかと思ったけど、そもそも依頼人だし、いい男には甘いのよねーアタシ。
 しょうがないなぁとか思いながら、仕方なく付き合うことにした。

「これはなんだ?」
「ええと、この町の名物らしいわよ。パンみたいなものですって」
「へえ……」
「食べたいの?」
「……別に何も言ってない」
「ふぅん、じゃあいいけどね」
「……」
「食べたいなら買ってきたら?」
「……ぃ」
「え?」
「今、必要な金しか持ってない」
「…………これくらい払うわよ」


「賑やかだな」
「ああ、今お祭りの時期なのよ。1週間くらい毎日広場で出し物や出店があるんですって」
「そうか」
「行きたいの? お金ないのに」
「ないんじゃない! 今持ってないだけだ!」
「はいはい」
「……ちょっとだけ」
「人の多いところは歓迎しないわ」
「ちょっとだけ」
「……」
「やった!」
「もぅ……」(ため息)



「楽しかったな!」
「そうね……」
 うっかり素直にうなずいてしまったくらい、予想以上に楽しかった。
 辺境の町ならではのはっちゃけ方をしたお祭りは刺激的だし、食べ物も美味しいし、なかなかおねだり上手な依頼人もイヤではなかった。
「もう暗くなってきたわ。宿に帰りましょう?」
 だから、この提案は少し残念だった。
(だって久しぶりにダムー以外のいい男ですもんねぇ)
 この気持ちは浮気ではないと思う。
 ……ダムーとは、浮気という言葉を使うような関係ではないから。
「……そうだな」
 この彼も、同じような性癖の人なんだろうなぁ……とこの数時間で感じた。

 だから、物陰に引きずり込まれてキスされても、そんなに驚かなかった。

「……んぅっ……」
 呼吸を全部持って行かれそうなくらい熱く求められる。
 思わず目の前の身体に縋り付く。
「一緒に旅してる彼とは、こういう関係?」
 キスの合間に投げかけられた問いになんと答えようか。
 身体の関係はあることはあるけど……それだけだ。
「だったら、何?」
 挑発的に下から睨め付ける。
 生唾を飲み込んだのが見えた。
「駄目かな?」
 さっきまでのおねだりと同じようなテンションで、だけど確実に熱を持った声が囁く。
 その間にも、不埒な手は身体を撫で回してくる。
 さりげなくその手に抵抗しながら、流されそうになっている自分を感じていた。
 ……ダムーは、こんな風に求めてこない。
 当たり前だ、彼は普通に女性に発情すタイプだからだ。
 それを何かの間違いでこうなっているだけ。
 久しぶりに感じる“同じ”相手の愛撫は気持ちよかった。
 流されてしまえ。浮気ではない。
 そのささやきに屈しようとしたとき。


「これはおまえの合意の上か?」


 今一番聞きたくない声だった。






[普通の恋じゃないなんて誰が決めた。(後編)]


「そうだね、言葉ではまだもらってないけどね」
 アタシが答えるより早く、アタシを抱きしめている男が答える。
「テメェには聞いてない」
 依頼人に向かってテメェ……。
「ベラ、どうなんだ」

 どう答えるのが正解なんだろう。
 どの答えが自分の答えなんだろう。

 業を煮やしたのか、何か言おうとしたダムーより先に口を開いた者がいた。
「とにかく宿に戻ろうか。いいトコで水もさされちゃったことだしね」
 依頼主だ。
 そう言ってあっさりとアタシを解放し、さっさと歩き出す。
 その後ろ姿を睨み付けたまま、動こうとしないダムー。
 とりあえず護衛しなくちゃね……と歩き出した時、すごい力で腕を掴まれた。
「宿に着いたら、その匂い落とせ」
 こちらの目を見ずに、硬化した空気のまま告げられる。
「……わかった」
 アタシも何故か目を見ることが出来ず、そのまま別れた。




「痛っ……!」
 突然の出来事だった。
 宿で風呂場を借り、一人部屋で悶々としているといきなり後ろから腕を捻りあげられた。
「ちょっと、何のつもりよ!」
「あそこで俺が出て行かなかったら、おまえどこまで許した?」 
 うまく答えられない。
「わからないわよ……でも雰囲気でそういうことになる時ってあるじゃない」
 最後の抵抗として言った言葉が、まずかったらしい。
 急に無言になると、有無を言わせず下着に手を入れてきた。
「ちょっと……待って! 今日はそんな気分じゃ……っ」
 急所を掴まれて言葉が途切れる。
 いい加減慣れた身体は素直に反応し始めるが、こちらも意地だ。
 声も上げず、顔も見ず、じっと嵐が過ぎ去るのを待つ。

 背中で、ひどいことをしているはずの男が泣いている気がした。





トップに戻る